軽減税率制度について思うこと

ブリ会議2019の懇親会で、酔った勢いでToyama.rbの年末LT大会でやった軽減税率の話を再演した。

法律施行の10月まで使える鉄板ギャグみたいな扱いをしていて、軽減税率芸人になりつつある。が、正直なところ本当にこれはギャグみたいな話じゃないの?って思っているのも事実。

なんだかな〜?と思っている点がいくつかあるので、思考整理も含めてまとめてみたい。

注意点

私は法律の専門家でもなんでもない。ただの一般人のプログラマとしての視点で考えたときに、おかしいな〜、って思った部分を書いている。そのため、その筋のプロが見たら「それは違う」という点があるかもしれない可能性も理解している。けど、これは個人のブログなのでそういうもんだと思ってほしい。

軽減税率とは

特集-消費税の軽減税率制度 | 政府広報オンライン によると、

社会保障と税の一体改革の下、消費税率引上げに伴い、低所得者に配慮する観点から、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」を対象に消費税の「軽減税率制度」が実施されることになりました。

とのこと。これを前提として書いている。

対象外品目の判断基準が複雑

ニュースとかでも言われているので知ってる人も多いと思うが、対象品目の判断基準が非常にややこしい。対象外品目として挙げられているのが

だが、ケースバイケースで判断しないといけないものが非常に多い。

実際に、個別事例のQ&A資料が公開されており、80以上のケースがひとつずつ記載されている。

消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)|国税庁

施行前の段階ですでにこれだけのパターンが出てきているのであれば、施行後にはもっと混乱を招くのではないだろうかと思ってる。

ちなみに個人的に一番面白いと思ったのは、「映画館のポップコーンが外食かどうか?」というやつ。答えとしては

  • 基本的には8%(軽減税率対象)
  • だが、売り場の前に座席などを設けた場合には対象外になる可能性がある
    • 飲食させるためのスペースとして設けた場合には軽減税率対象外(10%)

こんなもんわかるかよって感じである。

酒類・外食などの対象外品目に該当するか?ばかり考慮されていることにそもそも違和感がある

上記の個別例の資料では、内容の殆どが「これは酒類か?」「これは外食か?」といった内容のQ&Aとなっている。

あらかじめ対象外品目の種類を設定したからだと思うが、そもそも軽減税率は大前提として低所得者に配慮する観点から」実施されるものだったと理解している。

実施するのであればそこが一番重要で、様々な判断基準の中心にならないといけないような気がしているのだが、結果としては誰が見ても「???」な判断になってしまうものが多い。

パッと思いつくようなものでも、

  • 水道水 = 飲食専用じゃないから10%(軽減税率対象外)
  • ワンコインでお店で食べる牛丼 = 外食なので10%(軽減税率対象外)
  • かぜ薬 = 10%(軽減税率対象外)
  • 超高級な食材や金箔をリッチに使ったお弁当をテイクアウト = 8%(軽減税率対象)

などがある。

低所得者に配慮する観点から」という前提で考えると明らかにおかしいのは誰が見てもわかるが、最初に「酒類・医薬品・外食・ケータリング」といった大前提を決めたうえでそこに該当するか?という判断基準ですべてを考えてしまっているため、明らかに無理が出ている。

そもそも飲食料品が軽減税率対象で8%になるが、所得が多ければそれだけ飲食料品にかけるコストも高いことが多いだろうし、それらも一律で8%になってしまうのであれば、果たして誰のための軽減なんだろう?と思ってしまう。

新聞が軽減税率対象である話

これはもうなんというか、アレですよね。

言うまでもない。

適格請求書における免税事業者の負担の話

軽減税率が施行されるのと同日に適格請求書というものが導入される。 コレ自体に関する詳しいところはここでは触れない。

適格請求書等保存方式の導入について|国税庁

だが、

  • 「適格請求書発行事業者」でなければこれは発行できない
  • 課税事業者でなければ「適格請求書発行事業者」にはなれない

という点だけは気になっていて、現状では売上が1000万以下の事業者は消費税納税が免除されるが、上記の通り、課税事業者でなければ適格請求書というものは発行できない。

これの何が問題なんだろう?という話だが、請求書を受け取った側が消費税を納税する際、仕入れにかかったぶんは控除出来るが、これが適格請求書であることが条件になる。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

大企業などが従来の免税事業者から従来の請求書を受け取った場合、仕入れ分を控除できないので、本来より大きな消費税を負担して納税しないといけない、といった状態が発生する。

これは完全に損なので、免税事業者側から見ると「あっ、適格請求書発行できないなら取引やめますね」って言われて契約が終わってしまったりするかもしれない。

これはあきらかにアレなので、免税事業者も申請をすることで適格請求書発行事業者になることができるが、それはすなわち課税事業者になるということなので、今度は消費税の納税義務が発生する。

つまり、

  • 適格請求書を発行できないためのリスクを受け入れたまま免税事業者で居続ける
  • 今まで不要だった消費税の納税を行って課税事業者になる

のどちらかを迫られることになる。つらい。

結局、中小企業などが損をする形になるように見えるので、これでいいのか?と思ってしまう。

結局の所

軽減税率制度の根底にある思想とかそのものは理解できるが、現状ではなんのためにこれを実施するのか?というのがブレブレに感じるし、そのために皆が多大なるコストを払わないといけないのは割に合わない。

世の中を無駄に複雑にするのはやめてほしいな、という思いが強い。「無駄」というのが問題で、もちろんすべての事象が1か0かで表現できるとは思っていないが、1か0かに出来るものはそちらに倒したほうが、そこにかかるコストを他に使えて有益じゃないだろうか。

今の形では本来の目的である低所得者への配慮という点が満たせないだろうし、いっそのこと一律10%とかに上げてしまったほうがわかりやすいし皆幸せじゃないかなと思ってる。(それはそれでどうなんだっていう話もあるんだろうけど・・)

なおエンジニア的な話をすると、システムにおける改修コストもべらぼうに高いと思う。消費税率が5%から8%になったのとかとは違う次元。サマータイムの件も思い出すが、基本的にITわからない人たちが色々決めているんだろうな、と思うと色々と不安しかない。

以上。

なお

これを書いたのは、サマータイムなどと違って自分の仕事に直撃する人の割合が小さめなので、あんまり騒がれてはいないように感じているため、問題意識を世の中のエンジニアに一人でも共有しておきたいな、って思ったのがある。

もし意識せずマズいこと書いてて、どこかに怒られたら消します。

終わり。