"リモートワーク"の認識ズレ解消のためにリモートワークスタイルチェックを作ってみた

ふと思い立って "リモートワークスタイルチェック" というものを作ってみた。

→ 🔗 リモートワークスタイルチェック · GitHub

"リモートワーク" という言葉の認識の齟齬

最近、Meetyを使ってカジュアル面談をちょいちょいやっていて、いろんな方とたくさん話をさせてもらった。その中で、自分が地方に住んでるのもあってか、リモートワークが話題に上がることが多かったのだが、人によって "リモートワーク" の認識が大きく異なっている印象を受けた。

meety.net

「雑談が減っちゃう」という意見もあれば、「静かで集中できる」という方もいた。「通勤が無くて楽」という方もいたし「たまにはオフィス行きたい」という話も聞いた。

同じような環境だとしても、人によって捉え方は大きく違ってた。

また、これは個人だけの話だけではなく、企業でも同じことが言えると思う。1年ほど前に転職活動をしたときに、さまざまな会社と話す機会があり、似たようなギャップを感じることがあった。

これは一例だが、とある「フルリモート可能です」という会社との面談の中で色々と掘り下げて聞いていった結果、実際には「いまはコロナ禍もありフルリモート可能だが、将来的に制度が変更されて出社必須になる可能性はある」ということが後から解った、といったことがあった。途中で制度が変わることはあまり想定していなかったので、認識に大きな齟齬があったことになる。

誤解を招かないように補足しておくと、"後から言いやがって〜" などとその会社のことをどうこう言うつもりはない。その会社にとっては "リモートワーク" はオプショナルな働き方のひとつでしかなかったが、自分にとっては "リモートワーク" は人生に関わる部分なのでかなり重要な要素だった、というだけなので、どちらが正しい・間違っているという話ではない。

ともあれ、これらを踏まえ、あまりにも "リモートワーク" という言葉に情報を含めすぎているなぁという印象を受けた。

リモートワークにはさまざまなスタイルがあり、企業・チームによってスタンスが大きく異なる。リモートワークに全振りしてる会社もあれば、社会情勢を鑑みて限定的に許可しているケースもある。

個人側の "リモートワーク" に求めるものも多種多様で、自分のように地方在住なので基本的にフルリモートで1年中働きたい人もいれば、普段は出社で良いが家庭事情による突発的な在宅勤務を許可してくれればOK、という人もいるはず。

ただ、これらの結果で一番怖いのが、"認識の齟齬があるまま入社してしまった" という可能性が潜んでいる点だと思う。お互いに気づかずに採用が確定してしまうと、

  • 「リモートで静かに仕事できると思ってたのに、毎日オンラインMTGだらけじゃん!」
  • 「定期的に出社必須とか聞いてないんだけど〜」
  • 「入社して1年したらリモートワークがなくなったんだけど...」

といったおぞましい結果が待ってる恐れがある。

リモートワークスタイルの確認観点がほしい

リスクを減らすためにどうしたらいいか?と考えた時に、リモートワークについて確認すべき観点がどこかに列挙されており一般化されている必要があるな〜という結論に至った。

作ってみたチェック観点

実際に用意してみたチェック観点は次の通り。

※なお内容については、自分と同じように地方から長くリモートワークを経験している Toyama.rb の @kunitoo にも意見をいただいた。感謝

比重度と文化

まず大きく "比重度""文化" の2つに大きく分けている。

比重度は、どの程度リモートワークに重きを置いて業務を回しているかを判断する。

比重が大きいほどにリモートワークを前提とする社内制度が充実したり、何か課題があった場合も全員の課題となり解決しやすくなる。代わりに、常にリモートワーク独自の問題と向き合い続ける必要も強まったり、"オフラインのほうが手っ取り早いよね" という解決策を取りにくくなる。

スタイルチェック内にも書いたが、あくまでも「比重」を見るものであり、優劣ではない。より積極的にリモートワークを導入してるから良い、そうでないから悪い、という話ではない。 企業の属性や何を重要視するかなど、価値観はそれぞれである。リモートワーク全振りになることでむしろ働きづらく感じる人もいると思う。

一方で文化のほうは、リモートワークをどのようなポリシーで導入しているかを見る。

主にコミュニケーションに関わる項目が多く、オンライン上での会話量や、時間を合わせた同期的な仕事をどの程度必要とするかなどが対象。

「ある程度は直接人と話さないとつらいです」という人はビデオ会話が多い方が良いはずだし、「静かにもくもくと自分のペースで仕事したい」という人は真逆になると思う。

比重度の項目

リモートワークの導入期間

どの程度リモートワークを導入しているか。

シンプルに、期間が長い方が組織としてリモートワークへのノウハウが蓄積されているはず。また、長期的な実施ならでは課題にも向き合う必要が出ていると思われる。

スポット的な導入というケースもありうるため、期間が継続 or 累積によって判断を分けている。継続的に導入している方が比重が高いと判断している。

リモートワークの導入ポリシー

リモートワークを一時的なものとして導入しているか、恒久的に取り扱うか。 また、内容の変更がどの程度ありうるか。

「もう会社の制度としてがっつり組み込まれているので廃止とかは絶対ないです!」という導入なのか、「社会情勢を鑑みて一時的に使えるようになってます」という導入なのかを見る。

リモートワークのマジョリティ度合い

全メンバーのうちどの程度がリモートワークに関わっているか。 リモートワークの課題が全員のものとなるか、「リモートワークのひと」の課題となるかの違いがある。

リモートワークを全員で実施してるか、一部のメンバーだけが実施しているかで大きく扱いに違いが出てくる。「会議室のマイクの音質が絶望的に悪い...」みたいなケースも、リモートワークをするメンバーが多数派であれば全員の課題になりやすい。

申請・許可の必要性

リモートワークを行うために何らかの手続きが発生するかどうか。 また、申請が必要な場合にはどの程度の頻度で申請を行う必要があるか。

高頻度で申請が必要なほどにリモートワークがオプショナルな選択肢である割合が強くなり、リモートワークを実施するために何らかのコストが発生することになる。また、申請が必要=却下の可能性も出てくる。

リモートワークの適用範囲

リモートワークが利用可能なのは誰か。

利用のために何らかの条件が設けられているかどうか。

誰でも自由に利用できるケースと、出社可能なメンバーは出社必須なケースでは大きな隔たりがある。 また、社員は利用できるが業務委託の人はダメです、みたいなケースでも、実際に仕事をする上では不都合が出てくる可能性がある。

出社義務

業務上必須とされる出社がどの程度発生するか。 「義務」としての出社のみ数える。出社が伴うイベントだとしても個々の判断で出社せずにオンライン参加が可能なケースなどは含めない。

出社の頻度。頻度が高ければ高いほど居住地などにも制約が出てくる。 また、突発的な出社が発生する可能性がある場合、それは出社待機状態と変わらないため、考慮が必要。(@imunolionさんにご意見頂きました、ありがとうございます!)

リモートワークで必要なサービス・アプリケーションの取り扱い

リモートワーク・非リモートワークで利用するサービス・アプリケーションに差異があるか。

リモートワーク向けにサービス・アプリケーションを最適化しているかどうか。 クラウド移行などが全く実施されていない場合には、日常業務で支障が出る可能性もある。また、将来的に移行する見込みがあるかどうかも大事。

情報のアクセス範囲

リモートワーク時と非リモートワーク時に、アクセス可能な情報量にどの程度差があるか。 また、差がある場合にはそれをカバーする手段が用意されているかどうか。

リモートワーク時に手に入らない情報がどの程度あるか。 すべて同条件で手に入るか、リモートワーク向けに専用で議事録を用意してあげる必要があるか、まったくアクセスできないか、など。「オフィスでしかアクセスできない...」みたいなケースが多いほど出社頻度や、非リモート側の共有コストが生じる。

その他

その他リモートワークに関する制度や特徴的な情報など

段階的なものではなく、YES/NOで判断できるようなリモートワークに関する特記事項。

役員が自ら実施しているかや、手当があるかどうか、など。

文化の項目

同期・非同期コミュニーションの割合

コミュニケーションが伴う業務において、同期・非同期のコミュニケーションはどういった割合か。

同期的(=複数人が同じ時間でのやり取り)と、非同期的(=複数人でタイムラグを許容するやり取り)なコミュニケーションの割合。

同期的な割合が高いほど、働く時間が束縛されることが多くなるが、リアルタイムな反応を得られることになるため、スムーズに進めやすいように感じるかもしれない。 逆に非同期的な割合が高いと、自分のペースで仕事を進めやすくなりやすい。ただし、相手からのレスポンスも遅れることを許容する必要があり、タイムゾーンレベルで違いがある場合には、大きい工夫が必要となる。

テキストコミュニケーションの割合

リモートワークでのコミュニケーション方法において、テキストが占める割合はどの程度か

Slack・Teamsなどのチャットツールやメールのようなテキストベースでのコミュニケーションと、Zoom・Google Meets のようなビデオ・音声会話ツールでのコミュニケーションの割合。

テキストが主体であれば、必然的に文章に会話が残るため後から記録が追いやすくなるが、会話よりも情報量が減りやすく、工夫を伴ったコミュニケーションも重要になる。ビデオ・音声の場合は、テキストにはない表情や雰囲気といった情報を得やすく、心理的な面でのフォローもしやすいが、議事に残らず失われていく情報も多くなる。

コミュニケーション頻度

リモートワーク時に、どの程度他のメンバーとコミュニケーションを取るか (テキスト・ビデオなどの手段は問いません)

コミュニケーションの活発具合。

リモートワークはオフィスワークに比べて雑談が減りがちといった課題がある。それをストレスに感じてしまう場合、コミュニケーション頻度は重要になる。

逆に、余計な雑談などを省いて仕事をしたいと感じている場合には、成果物のみでのやり取りなど最低限のコミュニケーションスタイルのほうがマッチするかもしれない。

働く時間

リモートワークで働くにあたって、どういった時間帯に仕事をするか。 これによって同期・非同期の割合が決まったり、非同期の場合もレスポンス速度が変わってくる。

働く時間がどの程度マッチするのか。

働く時間が特に定められていない場合は自由度が増すが、同期的なコミュニケーションを必要とする場合には、事前調整が必要になるといったコストが発生する。 一方でコアタイムや定時などが定まっている場合には、ある程度で束縛されることになるが、同期的なやりとりは捗りやすい。(生活リズムが整いやすい、みたいなメリットもありそう)


というわけで、リモートワークスタイルチェックを作ってみたという話でした。

リモートワークが世の中に広く普及してきたものの、こういった差分を明確に文章化されたものが見当たらなかったため、悲劇が起きる前に書いておいた方がいいかなぁと思って頑張って作ってみた。

これで完璧な内容だとは思っていないので、TwitterでもGistコメントでもいいので、意見をもらえたら反映するかもしれません。

リモートワーク、むずかしいね!

おわり