脊柱側湾症の矯正手術をうけた

タイトルにある通り、脊柱側湾症と呼ばれるものの矯正手術を受けて、最近ようやくまともに活動できるようになってきた。

似た症状でどうしようかな〜って思ってる人のためになるかもしれないので、色々と記録として残しておく。

脊柱側湾症とはなんぞや

簡単に言うと、背骨が横に曲がっている病気。

普通の人はこう f:id:mugi1:20201109161908j:plain

自分はこうなってた f:id:mugi1:20201109161940j:plain

手術を受けることになるまでの経緯

まず、毎年健康診断を受けており、その際のレントゲン検査で毎回「側湾症」と記載されてたので、自分が側湾症であることは知ってた。

自覚症状は無いの?と言われるとバッチリあって、

  • 壁に背中がぴったりつかない(右の肩甲骨より上がつかない)
  • 肩の高さがよく見たら違う
  • 横腹に若干の張りを感じる
  • 両腕を無意識に前に伸ばすと長さが違う

みたいな感じで、冷静に考えると普通ではない。

ただ、

  • 健康診断の総合判断的にも「経過観察」的な扱い
  • 普段の生活では特別支障がない
  • 「側湾症」記載の健康診断結果出しても住宅ローン審査でも特に影響もなかった

といった理由から、致命的ではないと思って特に気にしてなかった。

が、ある頃から、腰のあたりに若干の痛みというか違和感を感じるようになり、整形外科に向かう。

私「湿布とかくださいよ〜」

先生「じゃあレントゲン撮ろうね〜」

〜30分後〜

先生「これは手術しないと多分だめだね〜」

私「!?」

そして意図せず大学病院への紹介状を手に入れた。

後日大学病院で診察を受け、次のような説明をされる。

  • 結構曲がってる
  • 手術しないと改善されることはまずない
  • が、手術しないと突然何か起きて死ぬとかもないので、経過観察も一つの選択肢
  • おそらく今後もゆっくりと症状は進む
  • さらに年齢が上がってからの手術のほうが大変で負担は大きい
  • 腰への負担が大きいため、放置するといずれ痛みが出てくることが予想される
  • 曲がり方が綺麗なので、比較的手術リスクは低め

なお、特に「コレが原因で発症します!」とかは無く、思春期の子供に特発的に発生することが多いらしい。自分の場合はその際に発見されずに大人になってから色々と支障が出てきた、みたいなケースだった。運が悪かったと。

手術の内容

手術内容を先生に聞いたら細かく丁寧に教えてくれた。自分は医者でもなんでもないド素人なので細かいことまではわからないが、だいたい次のような内容だった。

  1. 背中開く
  2. 背骨にボルト埋める
  3. ボルトをワイヤーで繋ぐ
  4. ワイヤーをガッとやっていい感じにまっすぐにする
  5. なんか色々とグイッとして歪みを直す

「俺の背中、ガッとしてグイッとされるんか...!!」 と考えたらなんか面白かった。

なお、術後数ヶ月はコルセットを巻いて生活する必要があるとのことだった。不便そうだけど、背骨ガッってやってるんだし、そりゃそうだよなって感じはした。

「手術にリスクあるの?」と聞いたところ、人間が行う手術である限りは完全にリスクゼロとは言い切れず、可能性の話でいうと、神経がダメージを受けて麻痺が出たりみたいなことも有り得るとのことだった。

とはいえ、電気信号のモニター?(よくわからん)とかでのチェック体制などもあって、現実的にはほぼ無いらしい。

手術を受けることにした

家族とも話したりして色々と考えた結果、手術を受けることにした。

手術を受けずに経過観察と言えば聞こえがいいが、つまるところ先延ばしにしてるだけな感じもしたし、若いうちにやったほうがええだろうなという判断。

お仕事に関しては1ヶ月ほど休職することになるが、長い人生を考えたらまあ仕方ない。

手術日まで何をしたのか

術前検査を色々と受けた。大体2ヶ月間で5~6回くらい通ったかも?

  • CT
  • MRI
  • レントゲン
  • 採血

などがメイン。MRIは爆音の中で30分以上放置される。ガードのために装着したヘッドホンから延々とジブリサウンドトラックが流れててシュールだった。

また、「貯血」というのをやった。輸血用の血液を事前に自分の体から抜いておくものらしい。400ccを2回にわけて、合計800ccほど抜かれた。鷲巣と闘うアカギが頭をよぎる。

血を作るのに青魚を食べるといいですよと言われていたが、偶然にも同時期に釣りにハマっており、大量に釣れるアジを食べまくっていた。きっと濃い血になっていたことだろう。

なお、最後の検査はPCR検査だった。コロナのアレです。

インフルエンザ検査の綿棒を鼻の奥でスクリューされる版って感じだった。ちょっと痛かった。

手術日前日(入院)

手術の前日から入院した。

とりあえず昼のうちにシャワー浴びとけと言われた。最期に身を清めておくわけか..とか考えてた。

また、翌日の手術〜退院までの一通りの流れを改めて説明された。

このときはじめて手術直後の姿をイラストで見て、1日後には

  • 人工呼吸器
  • 全身管だらけ
  • 何日かは自力で寝返り不可
  • 常時痛み止め注入

になるという現実を改めて知り「あっ、やっぱやめときます!!お疲れ様でした!!」って言いたくなったがグッとこらえた。

「入院中は暇だろうし、PC持ち込んでコードでも書いてよう!!」とか考えて実際持ち込んでいたが、この時点でもう無理だなって察した。

手術日以降

絶食状態で手術室に自力で歩いて移動する。部屋の前で妻に見送られた。

手術室の中はテレビとかで見るような部屋ですごかった。「ほんものだ!!」ってなってた。

手術室に入りベッドに横になる。ベッドがなんか暖かかった。

あとはもう点滴を繋がれて「いまから麻酔入りますよ〜」と言われたぐらいで記憶は終了してる。全身麻酔自体は初体験ではないので驚きはない。

目が覚めたらもう自分の入院部屋のベッドだった。事前にイラストで見た姿そのものになってた。管だらけ。

術後〜手術翌日

間違いなく人生で味わった中でMAXツラい時間だった。背中から腰にかけて、信じられないぐらい痛い。

肩や腰を少し動かそうとしてみたが激痛が走るので「あっ、これ動いたら死ぬやつだ!」と察してあきらめた。

痛さで死にそうなときには超強力痛み止め(モルヒネとかそういうやつ?)を点滴から少し入れられてだいぶ楽になるが、同時に急激な吐き気に襲われるという、痛みか吐くか選べみたいな状態なのもキツかった。

また、自力で体を動かせないが、ずっと同じ姿勢でいるとそれはそれで圧迫されて痛くなるので、ナースコールして寝返りをお願いする必要があった。だいたい1時間に1回ぐらい。

そんな感じで丸1日間ぐらいは瀕死な感じでベッドの上で過ごしていた。夜も寝れるわけがなく、ただただ耐えてた。

なお、手術翌日にコルセットを巻いて状態を起こすのにトライしたが、死を感じて諦めた。

なお全然関係ないが、事前にSwiftUIの勉強がてら作っていて入院日当日に申請したアプリが、このタイミングで審査をパスした通知がきていた。

「こ…このタイミングで…、ぐふっ」って感じだった。小さなお子様がいる方はぜひお試しください。

術後2日目

ようやく痛み止めの効果が痛さを超えるようになってくる。

めちゃくちゃ痛いのに変わりはないが、なんとか上体を起こすこともできるようになり、少し人間の姿に戻る。

ただ、体は相変わらず管だらけ。背中から出ている管から延々と血みたいのが出てるのがコワイ。

動けないためエコノミー症候群のリスクがあるとのことで、両方のふくらはぎあたりをエアーで自動モミモミしてくれる装置とかもついてて、体の自由度はほぼ無い。(とはいえ自由でも痛くて動けたものではない)

術後3〜4日目

歩行器を使ってギリギリ歩けるようになる。「これが大地か…!」という気分。

また、体からすべての管が抜けて、寝返りも自力でできるようになった。

自力で寝返りしたり、3歩ほど歩くだけで看護師さんがめっちゃ褒めてくれるので、世の中ぜんぶこんな感じならいいのになって思った。

そして病院食のマズさが際立ってくる。背中と腰は痛いが、味覚や内臓にはなんの影響もないので、なかなかキツかった。酸っぱい茹でた大豆みたいなやつは凄かった。

術後5〜7日目

術後検査(レントゲンとか)に歩行器を使って自力で歩いて行けるぐらいには回復する。

また、同様に病院内のコンビニに行けるようになる。病院食で味覚が飢えていたため、醤油やらアイスやらをめっちゃ買う。

そしてシャワーを浴びていいですよとお許しが出る。毎日お風呂に入る人間が一週間近く禁止されると、かなりのストレスになるということを身を以て知り、テルマエロマエを思い出していた。シャワー最高!!

なお、歩けても上体を少しでも捻ったりすると激痛が走るのはまったく変わらず、着替えなどのタイミングで "下半身のみでまっすぐ腰を下に落とす"、"腕力だけで上体を起こす" といったことが求められる。

リングフィットアドベンチャーを半年以上続けてて良かったと実感する。

一方で、夜になると高熱が出る日々が続く。手術後にはよくある話らしく、わりとしんどい。

術後8〜10日目

相変わらず痛いが、どういう姿勢をとれば痛みにくいかが慣れでわかってくるので、1日を過ごすのが多少楽になってくる。

そうなると、ベッドの上で横になったまま暇を感じ始める。とはいえ、体を長時間起こし続けるのはキツいので、MacBook開いてコードを書こうという気は1㍉も沸かなかった。

そして僕はガラル地方のポケモンチャンピオンを目指して旅に出ることになった。

www.pokemon.co.jp

横になったままでもプレイできるSwitchは偉大。

術後11〜14日目

歩行器を使わずに徐々に歩けるようになり、痛み止めが効いてる間はだいぶ楽に過ごせるようになってくる。

なお、このタイミングで身長を測る機会があったが、術前と比較して1センチ以上伸びてた。曲がってたものがまっすぐになったわけだから、そりゃ伸びるよなって感じ。

この歳になって身長伸びるとは思ってなかった。

そしてガラル地方のチャンピオンになった。ダンデさんはかっこよかった。

術後15日目〜18日目

当初は術後14日ほどで退院予定だったが、採血などの結果が芳しくないため、数日間退院が延期になった。かなしい。

ロスタイム的な入院生活で、この間は体感的に痛みなどの変化もなく、さほど特筆すべきこともない。ただ生きていた。

術後19日目

退院。

ハァハァいいながら気合で歩いて、妻に車で家まで送ってもらう。途中に線路でガタガタなったときに背中がとても痛かった。おのれ線路。

不思議なもので、自分の家で私服を来ているだけで気持ち的にだいぶ楽になった。自分のベッドと枕というわけで夜もわりと眠れた。家最高!

そして飯が最高に美味しい。味がする。

翌日にマクドナルドのハンバーガーを食べたが、「人類はこんな美味いものを食べてたのか…!」って思った。

術後3週間

家で起きてご飯たべて寝るだけの生活をしてた。

立って動くことはできるが、普通に痛いので、横になってる時間がほとんどだった。横になってたら寝るよね…。

また、退院後の初検査ということで、自力で運転して病院に向かった。めっちゃしんどかった。腰がずっと痛かった。

気合で検査を終えて自宅に帰ってきた後は、ソファに倒れ込んでそのまま1時間ぐらい動けなくなってた。

そして、この日から4日後には復職予定だったが、この結果を経て、休職期間を半月ほど伸ばすことにした。悩んだが、座ってるだけでまだハァハァ言いながら死にかける状態なので、仕事しても役に立てる気がしなかったので妥当だった気はする。

術後1ヶ月〜

今この記事を書いてる。

痛みはあるが、耐えられないレベルではなくなってきた。座ってられる時間がだいぶ伸びてきて、ようやくPCに向かって何か作業ができるレベルになった。

多少の外出も可能になってきたので、家族で鬼滅の刃の劇場版を観に行ってきた。煉獄さんがかっこよかった。心を燃やせ。

手術を受けてよかったか?

術後1ヶ月時点での感想

現状ではなんともいえない。

明らかに体の歪みがなくなったのは自分でもわかるし、人間として正しいフォルムになったのはよかったが、痛みは多少あるし、まだまだ私生活に不都合が多い。

術後1週間ほどのツラさはなかなかすさまじいものだったので、あれを思い出すと気軽に人に勧められるものではない。

ただ、骨の矯正手術の場合は治ったなって感じるには数ヶ月を要するとのことなので、また改めて加筆していきたいと思う。

ちなみに、世の中調べると「側湾症を整体で治す」みたいな情報がやまほど出てくるが、実際のところある程度進行した側湾症は手術以外の方法での完治はありえないらしい。実際手術を受けた感じでも、これだけ厳しいものが外部からグイグイやっただけで治るわけないだろって実感してる。

手術がツラいからといって変な方向に逃げるのはやめたほうがいいだろうなとは思う。

入院中にあってよかったもの・あったらよかったもの

個室

(あってよかったものって言われるとなんか違う気はするが)

病院によるのかもしれないが、自分は生命保険が使えることもあったので、有料の個室を希望した。

結果的にはとても良かった。

夜は発熱やら痛みやらで寝れたものではないので、複数人部屋だとかなりキツかったのではないかと思う。

術後しばらくはトイレやシャワーなども結構苦労するので、個室だとそのあたりもゆっくり使えるのは精神衛生上よい。

Nintendo Switch

横になったまま身動きがとれない時間が2週間ほど続くわけで、痛みはあれども暇は暇。

パソコンなどは姿勢の関係上利用がかなり厳しい。

自分はSwitchを持ち込んでゲームしてたけど、痛みも紛れるしよかった。

タブレットスマホ的なものでNetflix観てるとかそういうのでも良かったかもしれない。

入院前は「何かの勉強でもしてようかな〜」と考えてたが、実際手術を受けると、「痛くてツラいのになんでこの状態でさらに勉強とかやってれるかよ」としか思えないので無理です。

調味料

これも病院にもよるのかもしれないが、基本的に食事はとても味がない。「焼き目のない焼き魚」という謎の食べ物が頻繁に登場する。

この手術は、特に術後の食べ物には制限などは設けられないので、なんらかの調味料を持ち込むことをおすすめする。ふりかけとかもあるといいかもしれない。

手術費用

無保険だと520万らしい。即死ですね。

ただ日本の健康保険には高額療養費制度というものがあり、月額の医療費が超高額になる場合、所得に応じて一定額までの支払いまでに抑えることができる。

入院で個室希望をしたのと、入院中の食費などは別料金となったので、それらを全部含めるとだいたい30万円くらいの支払いだった。

幸い自分は生命保険にも個別で加入していたため、保険金支払いを加味すると、手出しは数万円で済んだ。


そういうわけで

現状はなんとか生きています。

同じ症状の人がいたら少しでも参考になったらいいな〜と思います。